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環境問題をAIの活用によって解決する|グリーンAIとは(その1)

環境問題は誰しもが避けて通れない、社会的な課題であると同時に私たちの子孫に責任を転嫁できない、いま何とかしなければならない大人としての責任の問題でもあります。

グリーンAIは、環境問題をAIの活用によって解決しようと言う分野の総称です。主たる分野は、(1)地球環境(2)エネルギー問題(3)生物多様性保全(4)資源循環の4つです。この各分野でAIがどのように活用できるかを、自然科学と社会科学(経済学、経営学)の観点から整理してみましょう。

少し大きなテーマなので2回に分けてお届けします。この前半部分では(1)地球環境(2)エネルギー問題を解説します。

・[h2]1.地球環境とAI

【”環境”という商品】

環境問題と聞いて、真っ先に頭に浮かぶのが地球規模で考える「温暖化」の影響でしょう。特にCO2の排出量の問題は、「京都議定書」で国際的な共通課題として世界的に認知され、環境問題(CO2排出量)を取引商材として、国際商品にしたことです。「国内排出量取引制度」(キャップ・アンド・トレード)もその一つです。

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(出典:「国内排出量取引制度とは」環境省)

「京都議定書」は名称こそは議定書ですが、れっきとした国際条約です。署名国にしか効力は発揮しませんが、非署名国でも「環境ビジネス」に参入することは妨げていません。

この「京都議定書」以降、各国で環境問題は人道的課題から経済的問題に発展しビジネスになって行きます。

【CO2の増加は何が問題なのか】

地球温暖化の原因の槍玉に挙げられているのがCO2です。

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出典:「温室効果ガス総排出量に占めるガス別排出量」(JCCCA)

地球温暖化の原因と言われる温室効果ガスにはさまざまなものがあります。なかでもCO2はもっとも温暖化への影響度が大きいガスと言われています。

産業革命以降、主に石炭を中心とした化石燃料の使用が増え、その結果、大気中のCO2濃度も増加しています。大気中のCO2の増加は地球の上に「布団」をかけたような状態にし、大気圏内の温度下降を妨げる作用を起こします。

この温室効果ガスが温暖化の原因が人為的である確率は「90%を超える」とIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)によって報告されています。

IPCC第5次評価報告書(2014)で、このままでは 2100年の平均気温は最大4.8℃上昇すると発表しました(温室効果ガスの排出量が最も多い最悪のシナリオ)。

地球規模での温度の上下は有史以来たくさんありました。では何故これほど問題にするのでしょう。極地の氷河の融解による水没の危険や砂漠化の進行は極地的にみれば大災害ですが、寒冷地や亜寒帯の地域にとっては、農作物の生育が進み収穫量の増加も期待できます。

一番の問題は既得権益の損失の計算はできても収益増加の計算(予測精度が低い)ができていないからです。環境問題は経済問題そのものだからです。この予測精度を向上させるのにAIの活用は無くてならない技術です。

次項で述べるエネルギー問題でも技術的に一番効果を発揮するのがAIです。

・[h2]2.エネルギー問題とAI

【エネルギー効率の計算と予測精度向上】

AIの活用分野は数値化できる定量的問題です。エネルギーと環境負荷の問題はパラメータ(引数)が多いですが、機械学習させるデータセットの最適化をはかれば答えの算出に多いに期待が持てます。

そのためには、導き出したい解答と前提条件を整備しておく必要があります。

まだ記憶に新しい事例としては、東北地震の時の福島原発停止に伴う節電です。政府の計画停電とは裏腹に、計画停電終了後の電力量の計算では停電させなくても需要対応ができ、余剰電力まであったと言う笑い話にはならない話があります。

AIによる予測計算が可能であればあのようなことが起こらずに済みました。

【無限エネルギーの活用】

世界全体の発電手法(IEA “Key World Energy Statistics 2017″)を見ると、化石燃料の依存度は全体で76.7%、まだ8割近くが「有限エネルギー」です。

『世界全体の発電手法(2015年)』

石炭    :39.2%
石油    : 4.1%
天然ガス  :22.8%
原子力   :10.6%
水力    :16.3%
地熱 : 0.3%
太陽光   : 1.0%
太陽熱   : 0.0%
風力    : 3.4%
潮力    : 0.0%
バイオマス : 1.8%
廃棄物   : 0.4%
その他   : 0.1%

しかし逆転の発想で考えれば2割超は「無限エネルギー」(水力、地熱、太陽光、風力等)から電力を得ている構造です。CO2排出量の多い、石炭による発電を「無限エネルギー」に転換できれば、環境問題だけではなくエネルギー問題も解決できる一石二鳥の成果が期待できます。

「AIが発電?」と考えるのは早急すぎで、最も有望視されている太陽光発電の分野へのAIの活用です。

現在の市販されているソーラーパネルの発電効率は20%と、お世辞にも優秀とは言えません。ではAIをどのように活用するかと言えば、「素材開発」です。

太陽光発電の発電効率はパネルの素材で変わります。これは、数ある素材の組み合わせによりその発電効率や生産性を考えて決めてきたわけです。これをスーパーコンピュータとAIによって無限とも思われる組合せから最適値を導きだすことが可能です。

大阪大学の研究チームでは、安価で安全・軽量な高分子太陽電池を従来の多種類の化学構造の組み合わせを実験で試さなければなりませんでした。この多くの時間と労力を必要としたものを、手作業で収集した1,200個の実験データを基に、「機械学習」で高分子構造を一瞬で選別し性能予測する手法を開発しています。(参考:科学技術振興機構、大阪大学)

このような応用研究を進め、発電効率を3倍、設置面積を3倍にすれば原子力発電をすぐに凌駕できるようになります。

京セラの開発した家庭用エネルギー管理システムはAIが利用でき、電力使用の傾向や天気予想から太陽光パネルの発電量、売電量を予測しエネルギーを無駄なく使えるようにします。システム稼働中も計測を続け運転を修正しながら計画の精度を高めます。すべて自動なので消費者は設定を変える必要がありません。

【エネルギーの地産地消】

無限エネルギーを電力に変換した後の次の課題があります。家庭や事業所への供給問題です。日本もようやく発電事業者と送電事業者が別々の企業になり、消費者が選択できるようになります。

これは鉄道事業者や社会的インフラ整備をしている事業者が電力ビジネスに参入できることを意味し、各産業分野のノウハウがエネルギー分野に投入できることを意味します。

電気はその性質上、低電圧の送電ではエネルギーロスが多いため遠方の発電所からの送電には高圧送電により、ロスを抑えようとします。

送電ロスは、送電電圧を10倍にすれば、損失が1/100になります。現在は50万Vの超高電圧送電で5%程度まで抑えられていると言われています。それでも、距離が長くなると送電効率が落ちてしまいます。

日本の電力生産量は1,013TWh(グローバルエネルギー統計イヤーブック2017)でその5%のロスは、ニュージーランドやポルトガルの年間消費量に匹敵します。

原子力発電や水力発電所は都会の真ん中に造ることはできません。しかし、ソーラーパネルはビルの屋上や壁面、住宅の屋根やカーポートの上にも設置できます。

家庭の場合を考えれば、発電所と使用箇所はわずか数mの距離です。これを高機能蓄電池やEVカーに蓄えれば送電ロスをほぼ0にできます。また、送電のための高電圧変圧器も送電線も鉄塔も必要ありません。

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(出典:「スマートグリッド・スマートコミュニティとは」資源エネルギー庁)
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/smart_community/

更に、貯めた電力を販売したり相互に譲り合うシステムも可能です。このような「小さな発電所」を網の目のようにメッシュ状に結合し、電力需給の調整と送電するしくみ「スマートグリッド」のコアテクノロジーもAIが担っています。わかりやすく言えば、電力版のインターネットです。

そして、このような高度なシステムの運用や制御もAIを活用して、だれでもが使いこなせるようなります。AIチャットボットの利用により、家庭内や工場の制御パネルやスマートフォンを通じて、対話型で利用できます。

・まとめ

環境問題にAIが貢献するのは、いままで見てきたように二つの側面〜科学と経済についてです。

対象が「自然」であるか「社会」であるかの違いです。

環境問題の原因解明と防止を科学的側面からAIを活用します。社会システムの変革をAIによって成し遂げ、経済的メリットを提供できることによって持続可能にします。ビジネスとして成立させることが、国境や現在政治的相違を乗り越える最も手取り早い手法だからです。

次のコラムでは、環境問題を「生物多様性保全とAI」と「資源循環とAI」の側面からAIの活用を整理してみます。

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