5Gって何?
日本では、今年開催される予定の東京オリンピック・パラリンピックが実質的なお披露目の場になるのではと言われている5Gサービスですが、5Gではどのようなことができるのでしょうか。
ちなみに「G」はGenerationの略で「世代」という意味になります。
日本ではアナログ式の携帯電話の世代である1Gから始まり、今皆さんが使っているスマートフォンは4Gということになります。4Gまでは携帯やスマホのための技術でしたが、5Gはあらゆるもの(端末)のためのネットワーク技術です。
さて、この「あらゆるもの」を具体的に言いますと、一例ではありますが、スマホ、家電、住宅設備、自動車、電車、農業や漁業の機材などまでがあげられ、これらが5Gのサービスでつながっていくのです。
既に5Gのサービスを開始しているのは、米国や韓国をはじめとする19か国(2019年末時点)。日本はオリンピックイヤーとなる2020年にサービスが開始される予定です。
5Gが注目される理由や、実際どのような場面での活用が期待されているのか見ていくことにしましょう。
5Gの3つの特徴
4Gと比較した5Gの優位性は超高速、超低遅延、多数同時接続の3つです。
1つ目の「超高速」とは、その名の通り通信速度が速いということです。目安ではありますが2時間程度の映画を約3秒でダウンロードできてしまうほどの速さになります。
2つ目の「超低遅延」とは、ほとんど通信のタイムラグがないということです。ちなみに、車の自動運転化、ドライバーの無人化を実現するためには5Gの技術が不可欠です。
仮に前を走る車が事故を起こした場合、事故情報の伝達時間が1秒遅れると、時速50Kmで走っている後続車は約14m走行してしまい、玉突き事故を生んでしまいます。ほとんど通信のタイムラグがない5Gやそれ以上の通信技術がないと完全な自動運転はむずかしいですね。
3つ目の「多数同時接続」は、例えば、何万人も集まっているサッカースタジアムで、ゴールの瞬間の映像を観客全員に同時配信することができるような技術になります。
あらゆる端末がネットにつながることを想定すると、一定の広さにおいて多くの端末が同時に接続できる環境が必要になってきます。
続々始まっている5Gの実証実験
既に多くの業界で実証実験が始まっています。
建設機械の遠隔操作の事例では、建機にカメラやセンサーを取り付け、現場で作業しているのと同じように遠隔操作を行うことができています。
これにより、操作スキルの高い熟練者が現場を飛び回らなくとも、容易に複数現場をかけもちすることができるようになるため、人手不足の対策として有望視されています。また、人が入れない災害時の復旧現場での活用も期待できるところです。
医療現場では、遠隔地にいる患者を医師が処置や手術を行う遠隔医療の実現が視野に入っています。
患者のいる場所にロボットアームを設置し、医師は遠隔地からモニターとコントローラーを使って処置を行うというものです。
医師が的確な処置を患者に施す際には、実は観る、聴く、触るなどの五感をフルに活用しているのだそうです。特に手術の現場では、手で触りながら患部を特定したり、メスを入れたときの感触から次の処置を施したりしています。遠隔地にいる医師は五感が正確に伝送されてこなければ的確な処置はできないことになります。
5Gの超高速、超低遅延という特徴が遠隔医療の実現性を高めているところです。
また、五感の情報を伝送できるということは、そのデータを保存しておけることにもつながることから、いわゆる「匠」と言われる属人化している技術も蓄積・保存することができるようになります。
高度な医療技術、手の感覚を頼りに精緻なものづくりをする旋盤技術、漆を塗り重ねて作る工芸品、非常に幅広い知識や高度な技術を必要とする宮大工など、その技術をデータ保存しておくことで匠な技術も継承されていくことができるようになるのかもしれません。
5GとIoTが抱えるセキュリティ課題
良いことずくめな5Gですが、あらゆるものがつながるということは、同時にサイバー攻撃にさらされるIoT機器が多くなるということを意味します。
IoT機器へ不正侵入された場合、その機器でやりとりされる個人情報や企業機密を盗み出したり、その機器を踏み台に、さらに他の機器へ損害が及ぶ危険性が高まります。総務省の情報通信白書によれば、既に全サイバー攻撃の半数以上がIoT機器を対象としたものとなっています。
これに対し、総務省では2019年8月にIoT・5Gセキュリティ総合対策(案)を策定しました。
内容としては、IoT・5G時代にふさわしいサイバーセキュリティ政策の在り方について検討され、IoT・5G セキュリティ総合対策として整理されたものとなっています。
今後5Gサービスは多くの国で普及していき、膨大なIoT機器がネットに接続されていくことになります。便利になるのと比例しセキュリティリスクも大きくなっていきます。安全な利活用には、定められるセキュリティガイドラインの遵守や内部統制という「人」がキーになる部分も含めて企業は対策を取る必要があります。