「テレワーク」という言葉が世の中に急激に浸透し始めましたね。昔から知っているよという方もいれば、最近知ったという方も多いかと思います。テレワークというもの自体はかなり昔からありました。しかし、日本でも何度も取り入れようとしたのですが、パソコンの普及、自宅でのネット環境の普及などが進んでおらず、また、どうしても人目が気になってしまう日本人の性質から人目の無い場所だと気持ちの切り替えができず、生産性が落ちてしまうことなどがあり、なかなか導入には至らなかったのです。そして、今、コロナウイルス流行のため、人との接触が外出自粛が求められ、必要に迫られ、急激に普及したのです。
そんなテレワークですが、知っておくべきメリットと気を付けなければならないデメリットが存在しているのはご存知でしょうか?
そんなの知ってるよ、と言う方もいらっしゃるかもしれませんが、自分が行っているテレワークでの仕事は本当に大丈夫なのか、これから導入しようとしている方はその準備が本当に足りているのか、再度、確認するきっかけになるかと思いますので、お付き合いくださいませ。
テレワークの歴史
さて、まずはテレワークの歴史から話していきましょう。
テレワークは1970年代にエネルギー危機とマイカー通勤などによる大気汚染緩和を目的とし、アメリカのロサンゼルスで始まりました。アメリカではその後、パソコンの普及などに伴い、1990年頃には一般的な働き方の1つとなりました。日本では、1984年頃にNTTによって実験が行われたのが最初だと言われています。その後も何回か導入をしようとしますが、なかなか上手くいきません。総務省の調査では、テレワークを導入している企業は2018年で19.1%と非常に少ないのです。
日本でテレワークがなかなか普及しない理由
何故、日本ではテレワークは上手くいかないのでしょうか?
原因の1つに日本人の性格があります。テレワークは基本的に己を律することが得意な方に向いている働き方です。会議の途中でもはっきりと意見を言えるような人ですね。
テレワークには、周りに流されることなく、仕事ができるかどうかが重要になってきます。しかし、日本人は良く言えば「協調性」がある。悪く言えば、周りに合わせてしまい、流されやすい「同調性」が高いのです。その結果、テレワークでも周りが気になってしまい、効率が上がらないことが多いのです。
ですが、必ずしも日本人の性格が悪いというわけではありません。
日本人の協調性の高さは海外ではあり得ないと思われるレベルです。日本人は互いを認め合い、支え合い、協力し合いながら仕事をします。相手をよく見ているので先回りして仕事をすることもできるのです。これはなかなか海外ではまねできないことです。海外映画でも仕事では自分が高い地位に行くために周りを蹴落としながらのし上がっていくシーンを目にすることがあるかと思います。一方で日本の映画は、蹴落としたりするような内容が完全に無いわけではありませんが、一緒に切磋琢磨したり、困難を仲間と乗り越えていくタイプのストーリーが多いとは思いませんでしょうか。その協調性が日本人の良いところでもあり、悪いところでもあるのです。
では、今までの話を踏まえて、メリット・デメリットの話をしましょう。
テレワークのメリット・デメリット
テレワークのメリットとデメリットの一部を箇条書きにしてみました。
メリット
- コスト削減
- 育児・介護に携わる社員の雇用継続
- 安全性と事業継続性の確保
デメリット
- セキュリティリスク
- コミュニケーションロス
- 勤怠管理の複雑化
もちろんこれだけではないでしょう。何事にもメリットとデメリットがあります。それを上手く活用し、生かしていくかが重要なのです。
さて、1つずつ説明していきましょう。
様々な可能性を広げるメリット
コスト削減
まずはコスト削減についてです。
なぜ、テレワークにするとコストを削減できるのか。これは、各個人が家で仕事をするからこそ生まれるメリットです。
家で仕事をするとどんな良いことがあるでしょうか?
まずは通勤時間が無くなるということですね。これによって、通勤時間を仕事に充てることができますし、電車遅延や天候に左右されることもないのです。これで時間というコストが削減できます。次に通勤にかかる費用が削減されます。社員全員分の通勤交通費がなくなるというだけでかなり削減できたと思いませんか?また、オフィスに行くこともあまりないので、オフィスの電気代、水道代、場所もそこまで広くなくていいですね。あとはノートパソコンさえあれば良いのでデスクトップパソコンもほとんど用意しなくても良いでしょう。データはすべてクラウド管理なので、付箋紙とかの文房具も必要ありませんね。印刷することもないので紙代もカットできるでしょう。他にも削減できるものは多くなり、様々なコストが削減できることでしょう。
育児・介護に携わる社員の雇用継続
優秀だった人が出産を機に会社を辞めてしまう。両親を介護するために仕事を続けられなくなるなど、今までどうしようもなかった問題が解決します。会社を辞めなくても自宅で時間を見つけて仕事をしてもらうことができるのです。
未だに出産、結婚によって仕事を辞めてしまうからという理由で女性を雇用したがらない企業や結婚した人や出産して育児休暇を取っていた人に冷たく当たる職場も多くあります。そんなその人にも企業にもよくない差別を軽減することができるのです。
安全性と事業継続性の確保
ウイルスの流行、自然災害など、人間ではどうしようもない問題が多くあります。そんな時、企業は社員に無理をしてでも会社に来いというわけにはいきません。そんなことをすれば世間からのバッシングはもちろんのこと、訴えられ、裁判沙汰になる可能性もあります。社員がそれによってケガをしたり、命を落としたりするようなことがあれば、企業は責任を取る必要が出てきます。しかし、企業も仕事をしてもらわなければ立ち行きません。そんな時に自宅で仕事ができれば、無理をして出社してもらう必要はなく、仕事をしてもらうことができるのです。社員の安全も仕事の継続も両方行うことができます。
なくすことができないデメリット
セキュリティリスク
会社外に仕事の情報を持ち出すことになるので、どうしても付きまとうセキュリティ問題。いくらノートパソコンのセキュリティを強固なものにしたとしても、家族が覗き見てしまった、Skypeなどでのツールを使ったMTGの際に周りに聞こえてしまったなど、ノートパソコンのセキュリティのみではどうしようもない問題もあります。そのため、どのような対策を行うのかが重要になってくるのです。
コミュニケーションロス
これは普段、一緒の職場で働いていたとしても起こる問題です。それ故にテレワークになった際には、テキストでの会話が主となるため、さらに起こる確率が高くなります。これは言葉を尽くしたり、定期的にSkypeなどのツールで顔を見ながら話すことで解消できる問題ではありますが、それでも完全には防ぐことはできないでしょう。最近では、そういったコミュニケーション不足を解消するためにテレワークでの飲み会を行ったり、ゲームをしたり、イベントを行うことでコミュニケーション不足を緩和する企業もあるそうです。
勤怠管理の複雑化
どこも抱える問題でしょう。出社すれば姿が見えるので、勤怠の管理も楽にはなりますが、テレワークは姿が見えないので、何時、どのようなことをしているのかがわかりにくいのです。また、長時間労働などを行っていても発見するのが難しく、管理が煩雑化しやすくなります。その問題を解消するために様々なテレワークツールがありますので、それを利用すればある程度は緩和できることでしょうが、やはり実際に姿を見ているのと見ていないのでは管理のしやすさは大きく変わってきてしまいます。
先を見据えるために
テレワークを導入できない職種はもちろんあります。しかし、テレワークを導入できる企業もたくさんあります。
テレワークを導入することによって社員はもっと働きやすい環境になります。そのうえ、子どもにとっても家で仕事をしていたとしても家に親がいる安心感は比ではありません。子を持つ社員が自宅で一人待つ子どもを思い、不安に感じることもありません。会社としては、子どもを見ながら仕事ができるということで、人材の確保や子どもができるので退職することも減るかもしれません。もちろんデメリットもあります。しかし、デメリットとメリットを天秤にかけた際にどちらに傾くでしょうか?
今、テレワークを導入し、社員の安全などを確保することが急務になっています。それが無いとしても世界に追いつくためには導入していかなければなりません。情報管理、セキュリティ、自宅での環境、コミュニケーションロスなど、様々な問題もあります。しかし、それ以上のメリットもあります。通勤時の満員電車などのストレスなどから解放された社員は心にゆとりができるでしょう。さらに、子を持つ社員は安心して働けるようになります。企業も人材の確保がテレワークを導入する前よりしやすくなるでしょう。万が一、外に出られないようなときでも仕事をしてもらうことができます。突然の大雪などで電車が動かない、台風で外に出るのは危険、子どもが急に熱を出したから出勤できない、そのような事態になった時にテレワークができる環境になっていれば今までできなかったことができるようになるはずです。
準備するまでは大変だと思います。しかし、先を見据える上でテレワークの導入は必要なものなのではないでしょうか。